『入院生活での想い出・新生ランボーの確立』・・・Part1

 
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クリスマス .....

 

この時期が来ると思い出す・・・

 

12月22日 火曜日

 

 

入院生活を過ごしているあいだ、ただ単に手をこまねいていた訳ではなく、

音楽人としての再スタートを切るための準備を、少しずつではあるがこなしていた。

 

曲も新曲を書き始めていたが、ある部分から遅々として進まず、イメージは掴めているんだけれど、

なかなかしっくりとは来てなかった。

と同時に、ギターの方もリハビリを開始したわけだが、こちらの方もしっくりとは来てなかった。

 

あるとき、弟が差し入れしてくれたヘンドリックスの音源を何気に聞いていたら、

ある事がフッと頭の中にイメージとして浮かんだ。

それは、ヘンドリックスをはじめ、多くの黒人ギタリストたちの『ピックの持ち方』である。

 

以前から『何で黒人はあげな変な持ち方ばするとかいな?』と不思議ではあったのだが、

そこまで深く考えた事はなかった。

が、時間はあり余るほどあるし、『ちょっと真似してみろぅ。』と始めたが、これが難しい。

 

これがキッカケでピックの持ち方改造を始めたのである。

 

曲作りも進まず、ピッキングもうまくいかず、時間だけは容赦なく流れ、そうこうしている内に突然、

本当に突然『あれっ!! あれっ!!』

いままで、力で押してたことがいきなり、 Σ(゜Д゜;エーッ!  出・来・た・のである!!

 

『はぁ〜、ギターってこうやって弾くったいねぇ。』

やっとギターの弾き方が解かってきた瞬間だった。

  それからというものは右手の練習が面白いように進み始めた。

 

 

 

『総合病院一階受け付け待合室での出来事』

 

 

ある日の夜中、誰もいなくなった総合病院一階受け付け待合室での出来事。

 

寝付けなかったのでギター片手に(エレキでもちろん音は出ない)車椅子で待合室に向かい、

誰もいないのを確認した上で練習を始めたが、暫くすると誰もいないはずの奥の片隅から拍手が聞こえた。

一瞬『えっ!』と思ったけどよく見ると女性患者が一人、奥のソファーで横になっていた。

 

俺 『すみません、うるさかったでしょう?』

 

女性 『いいえ、私も眠れなかったので、ここで暇つぶし、してました。』

 

俺 『そうですか、すぐ止めますから・・・。』

 

女性『あ、止めないでいいですよ、続けてください。私は構いませんので・・・あのう、リクエストしていいですか?』

 

俺 『ハイ、俺が出来る曲やったら、よかですよ。』

 

女性『じゃあ、ジョージア・オン・マイ・マインドを。』

 

俺 『わかりました、大きい声が出せませんから、小さく歌いますね。』

 

 

1,2曲終わったときに・・・、

 

俺 『実はいま、作りかけの曲があるんですけど、どうもいまいち進んでないんですが演ってみてもいいですか?』

 

女性『是非、聞かせて下さい。』

 

3,4曲の“二人だけのコンサート”やった。彼女が喜んでくれたのが嬉しかったし、楽しかった。

   

 『はよこの曲完成させて、彼女に聞かせちゃろー。 (*^m^*) ムフッ♪』

 

俺は相変わらず夜中に病室を抜け出して練習していたのだが、ある夜中、30〜40分も演ったころだろうか、二階から宿直であろう看護師さんが降りてきて、『響きますから、止めてください!!』と怒られてしまった。しかし、その時に感じたのは怒られたっちゅう事よりも、

 

 

『な、何で二階から? こげん広い病院の中で?? 

  ひょっとして、音が抜けて行きようとかいな??? アンプも無しにっ!?』

                         ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ  ドッカーンッ♪♪♪

 

不思議な気持ちと嬉しい気持ちが妙に絡み合っていた。

 

この瞬間が新生ランボーの誕生だと確信する。

 

 

そして、あの女性と出会ってから4,5日も経った頃の事であるが、見知らぬ年配のご夫婦が俺の病室に訪ねてこられた。

 

夫婦『あのう、失礼ですが、古澤さんですか? うちの娘がお世話になりまして・・・。』

 

俺 『えっ、僕が古澤ですが、何かのお間違いでは?』

 

夫婦『いえ、ギターを弾いてる患者さんのことをナース・ステーションでお尋ねしたらすぐに、古澤さんでしょう、と、この病室を教えていただきました。』

 

 一年半も入院生活を送っていると、どんな大きな病院でも大方の病院関係者には顔と名前くらいは覚えられるものである。

 

 

俺 『お嬢さん・・・ですか?』心当たりも無く考えていたら、

 

夫婦『三日前に歌を歌って頂いた、とか・・・娘が大変喜んでおりました。』

 

俺 『あ〜〜、あの時の。あれからお嬢さんにはお会いしてないですが、無事に退院されたんでしょう? 本当に良かったですねぇ。』

 

あれ以来、彼女の姿を見ていなかったので、

俺は彼女が退院したものとばかり勝手に思い込んでいた・・・。

 

あの、“二人だけのコンサート”から二日後、彼女の容態が急変し、

                         帰らぬ人となってしまっていた・・・。

 

 

あの日、彼女が誰にとはなく、つぶやいた言葉を想いだす・・・。

     

            『もうすぐ、X'mas・・・ですねぇ・・・。』

 

たった20分かそこらの出会いやったけど、強烈な印象を彼女は俺に残した・・・。

 

完成した新曲を彼女には聞かせることは出来んかったけど、彼女をモチーフに書き上げた曲が・・・

 

       

             “シンデレラX'mas”

 

『もうすぐ やってくるよ、素敵なメリー・クリスマス

     

       窓の外のモミの木も 雪のドレスで お洒落して

       

                魔法の杖を握って 優しく一振りすれば

       

                          夢の国への 扉がひらくよ・・・ 』

 

 

俺には・・・歌えない・・・。歌わない・・・。

 

その日の夜、俺たちが出会った時間帯・・・窓の外にはしんしんと雪が降っていた・・・。

 

 

二日後がX'mas・・・。

 

          『もうすぐ、X'mas・・・ですねぇ・・・。』

 
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